2017/02/21

吉田友和「ハノイ発夜行バス、南下してホーチミン ベトナム1800キロ縦断旅」感想。
紀行文。2017年02月05日読了。

私の中では元祖デジタル旅行作家の吉田友和氏のベトナム旅。

私が読んできた旅行作家は、
宮脇俊三(1926生・鉄道マニア)、
藤原新也(1944生)、
椎名誠(1944生・小説家)、
沢木耕太郎(1947生)、
関野吉春(1949生・冒険家)、
鈴木正行(1949生・全世界放浪)、
下川裕治(1954生・貧乏旅行追求)、
蔵前仁一(1956生)、
堀田あきお(1956生・マンガ家)&かよ夫妻
おがわかずよし(1959生)、
田中真知(1960生)、
船尾修(1960生)、
素樹文生(生年不明)、
宮田珠己(1964生)、
高野秀行(1966生・ルポ)、
鈴木傾城(生年不明)、
小林紀晴(1968生)、
石田ゆうすけ(1969生・自転車で世界一周)、
たかのてるこ(1971生)、
◆吉田友和(1976生)、
角幡唯介(1976生・冒険ルポ)、
石井光太(1977生・ルポ、ドキュメンタリー)、

など、多くの作家さんの紀行文を読んできた。

私が読んだ作家さんの多くは既に45歳以上である。ここに挙げた作家さんの処女作は、おおむね15年より前に発行されている。分類すると以下のような感じ。

・自分の趣味をとことん追求する(宮脇俊三・石田ゆうすけ)
・バックパック旅の体験談、失敗談を面白おかしく書く(蔵前仁一・おがわかずよし・宮田珠己・たかのてるこ)
・出版ニーズに合わせ、テーマを突き詰める(下川裕治)
・旅に人生を見出す(藤原新也・沢木耕太郎・素樹文生・小林紀晴)
・探検記(関野吉春・高野秀行・角幡唯介)
・アンダーグラウンド(鈴木傾城・石井光太)
・地誌学的(田中真知・船尾修)


私が読んできた作家さんの中で、いち早くデジタルデバイス(パソコンやスマホ)を有効活用した旅をして、それを著作に反映させたのが本書の著者、吉田友和氏。他にもそういう作家さんはいると思うけど、私は知らず。

吉田さんのデジタル旅は私にかなりの影響を与えた。

本書はそんな吉田さんのベトナム旅。でもデジタルデバイスはそれほど活用するわけではなく、ベトナムの現地旅行代理店で非観光スポットを手配ツアーで組んで、自分好みの旅に行ってきた紀行エッセイ。

本書ではホーチミンの高級ホテル、マジェスティックに一泊するところが書かれている。私がベトナムに弾丸旅行(週末2泊4日)に行ったときを思い出した。私が行ったときは、マジェスティックホテルの前の道路は渡れた。トラックがバンバン通ったけど、渡れないほどじゃなかった。今は違うのかな。それとマジェスティックに行ったのなら、最上階のバーにも訪れてほしかった。

吉田さん、ちょっと方向性に迷いが出てきているのかなあ。と思う部分もあるけれど、肩の凝らない読み物としては良。吉田さんの良い意味での緩さは、思いもかけない方向から評価されているみたいで(すみません)、本書はテレビ東京でドラマ化される。
ハノイ発夜行バス、南下してホーチミン~ベトナム1800キロ縦断旅
2017年2月26日(日) 16時00分~17時15分

私が紀行文をよく読んでいたのは2005‐2009年頃なので、私のアンテナが感知しなくなっただけなのかもしれないが、最近若い旅行作家さんがあまり世に出てこないように思う。

TBSのクレイジージャーニーに出ているヨシダナギ(1986生)、佐藤健寿(生年不明)、丸山ゴンザレス(1977生)などがいるが、20代で若さ爆発な人はもう出てこないのかも。出版不況だし、紀行文は旬が大切なところもあるし(2017年2月の今なら台湾が売れる!とか)、無料公開されているブログに面白い紀行文は山ほどあるし、世界中が均質化してきて文章で楽しさや面白さが伝わるところは減ってきているし(アフリカはまだ面白いと思うがニーズが少ない)。

いかん、愚痴になってしまった。


6点/10点満点

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2017/02/16

ピーター・ナヴァロ/赤根洋子訳「米中もし戦わば」感想。
戦力分析。2017年02月02日読了。

著者のピーター・ナヴァロ氏はカリフォルニア大学アーバイン校の教授で、ドナルド・トランプの大統領選選挙アドバイザーになり、現在はトランプ大統領が新設した国家通商会議の初代委員長。

本書は帯に「大統領補佐官自らが執筆! 防衛省現役組が今読んでいる本」と大々的に煽っている。

実際、巻末の解説は防衛省の主任研究官が書いている。

この手の世界各国の戦力分析に関する書籍は、小川和久・坂本衛「日本の戦争力」2006年02月03日読了。10点満点

を筆頭に、昔から何冊か読んでいる。現代の戦争は空を制して(制空権を握る)、そのあと海を制する(制海権を握る)。それが出来ればほぼ勝つ。

というのだったが、本書は違う。

数は力。それが本書。

本書に書かれている内容は、アメリカ人がこんなに日本と韓国と北朝鮮と台湾のことを知っているのか! と驚きを隠せないほど詳しい。生半可に新聞記事(というかネットに載っているニュース)ばかり読んで知った気になっている私なぞは、著者の知見の深さに驚いてしまった。(とはいえ、年に数万ドル~数十万ドルの賃金をもらっているなら、このくらいの分析をするのは当たり前なのだろうが)

本書を読んでとにかく驚いたのは、アメリカも日本も採用しているイージスシステム(平たく言えば、自国の空母や自国の国土を狙って発射されるミサイルを、イージス艦が次から次へと撃ち落とすシステム)は、イージス艦が搭載しているミサイル数を上回るミサイルを直接イージス艦に向けて撃てば、イージス艦は自分の防衛で手いっぱいになり、自艦に積載しているミサイルが尽きたら一巻の終わり。

つまり、数の多さが勝負のカギ。

これは…「防衛省現役組が今読んでいる本」という帯文句も分かる。

中国が、サルでも作れる格安兵器を大量に戦場にぶち込んだら、アメリカ軍は負ける。

ということが書かれている本である。

恐ろしい。


9点/10点満点

2017/02/17追記
佐藤優氏による本書のレビューが、現代Webに載っていましたのでリンクします。

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2017/02/08

ヨリス・ライエンダイク/田口俊樹・高山真由美訳「こうして世界は誤解する」感想。
ジャーナリズム論。2017年01月28日読了。

中東に駐在していたオランダ人ジャーナリストの著者(エジプトのカイロ大学に留学しアラビア語ができる)が、ジャーナリズムは果たして本当のことを伝えているのだろうか?

という疑問を正直に読者に投げかけた本。

原著は2006年に出版され、日本語版は2011年に出版された。

ジャーナリズムを知らないド素人だった著者は、アラビア語ができるという一点でオランダの新聞社に雇われ、中東特派員として赴任した。ついでにラジオの仕事も受ける。ラジオに音声出演するときは、オランダの放送局があらかじめ原稿をまとめているので、著者は原稿に沿って喋るだけ。特派員の存在価値は、その場所にいて、その場所から喋ること。

中東のニュースの最新情報は、現地のジャーナリストを雇って調べている通信社(日本だと共同通信が有名)が逐一情報をくれるので、特派員が直接調べなくてもいい。でも、どこかの国が戦争になり、軍司令官や防衛大臣が記者会見する際は、記者会見の場にいて、そこからリポートすること。

西側メディアはアラブ諸国が悪いというバイアスで報道する。
アラブ諸国はイスラエルが悪いというバイアスで報道する。

では、アラブ人同士の戦争は誰がどう報道する? モロッコ対アルジェリア、エジプト対シリア、スーダン対サウジアラビア、イラク対クウェート(これはクウェートが西側陣営)、シリア対ヨルダン、ヨルダン対パレスチナ、そして国内がバラバラで敵ばかりいるレバノン。

経験を積んだ著者は違う新聞社に移り、テレビの仕事もするようになった。パレスチナに行き、子供をイスラエル軍に殺された母親の取材をする。この母親はパレスチナのフィクサーを通して紹介された。フィクサーは世界中のテレビ局に「悲惨な境遇にある人物」のリストを持って売り込みに来る。西側のテレビ局は手っ取り早くインタビューを済ませたいから(パレスチナに入国するにはイスラエルの厳重な警備を通るので面倒)、フィクサーのリストを活用する。リストに掲載されている人物が喋ることは嘘ではない。ただ、フィクサーは同じリストを世界中のテレビ局に売っているので、世界中のテレビ局が同じ人物に何度も異なるインタビューをすることになる。

フセイン時代のイラクでは、独裁国家の恐ろしさを身に染みて理解した。

著者はエルサレムのパレスチナ人居住区である東エルサレムに引越しした。

イスラエルは広報が上手い。
パレスチナは広報が下手だ。

パレスチナはもうちょっと世界に通用する広報をすれば、世界中から支援がもっともっと集まるのでは?

しかし現実のパレスチナは、PLO(後のファタハ)=アラファトが独裁者として君臨しているだけだった。広報はアラファトの腹心。能力なんて関係ない。アラファトは、自分がリッチな状態を維持できればそれでいい。イスラエルと和平を結んで自分の名声が上がり、援助金がじゃぶじゃぶ入ってくるのは最高に望ましい。

(注:ファタハに愛想をつかしたガザ地区(海側)のパレスチナ住民は、ハマスというイスラエルを敵視する政党に乗り換えた。ハマスはガザ地区からファタハを追い出した。しかしファタハは依然ヨルダン川西岸(内陸部)を押さえている。パレスチナは事実上、2か国に分裂している。と言ってもアメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリア、日本や韓国、ノルウェー、フィンランド、デンマーク、スイス、スペイン、ポルトガルなどが国として承認していないので、国ではないのだが)


「事実と見解をはっきり区別する」


現代ジャーナリズム、特にテレビの世界ではこれが守られていない。


とても面白い本だった。


8点/10点満点

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2017/02/04

デクラン・ヒル/山田敏弘訳「黒いワールドカップ」感想。
サッカー八百長ルポ。2017年

プロサッカーでは八百長がまかり通っている。

中でも一番厄介なのは、試合前から勝敗がほぼ見えている実力差のある試合で、負けが濃厚なチームを買収して本命チームを確実に勝たせること。これはどこからどう見ても八百長に見えない。

八百長を仕掛けた連中は、単純な試合の勝敗ではなく「何点差で勝つか」に賭ける。従って負けが濃厚なチームに「2点差で負けろ」というような買収を行う。

ということを、シンガポール、マレーシアのプロサッカーリーグで実際に八百長を仕掛けていた組織とコンタクトを取り、さらにヨーロッパで八百長を仕掛けている組織にもコンタクトを取り取材したのが本書。

フランスの1部リーグに所属するオリンピック・マルセイユ(現在酒井宏樹が在籍している)は、1993年に八百長が発覚した。

2006年にはイタリアのセリエAで大規模な八百長が発覚し、ユベントスが2部に降格した。

本書の原著は2008年に、日本語版は2010年に出版された。

著者はイギリスのオックスフォード大学院に通いながら本書の取材を開始し、卒業後ジャーナリストになった人。

八百長はワールドカップにもおよび、グループリーグ2試合目で勝ち抜けもしくは負けが決まっているチームは、八百長の手が伸びやすいとのこと。

既に明らかになっている事件の詳細な解説と、著者が独自に八百長フィクサーと面会し取材した内容が混在している。

興味深い内容なのだが、ちょっと読みづらい。

イギリス人の著者は、八百長の結末について比喩や暗喩を多く用いている。ルポなんだからそこはズバッと明確に書いて欲しいのに暗喩を使っているので、もやもやする。


6点/10点満点

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2017/02/01

ドン・ウィンズロウ/峯村利哉訳「ザ・カルテル(下)」感想。
メキシコ麻薬戦争小説。2017年01月14日読了。

小説を読んだのは、麻野涼「死の臓器」2015年08月04日読了。2点。以来である。

下巻(約580ページ)は3日で読んでしまった。

先が知りたくて止まらない。そういう小説だった。

メキシコ麻薬戦争の(たぶんかなりリアルな)今を反映しているので、殺し方は残忍だし、まさかこいつが?!と思う連中が買収されているし、こいつらが手を組むのか!という展開もある。

セータ隊という国軍のエリートが作った麻薬組織が出てくるが、これはロス・セタスという実在の麻薬カルテルをモデルにしている。(ロス・セタスでググると超絶グロ画像がいっぱい出てくる→麻薬カルテルは敵対組織に恐怖を植え付けるため、惨殺した被害者を写真にとってネットにアップしている)

リアリティがありすぎて恐ろしいのだが、先を読まずにはいられない。たぶん全世界中の読者がそう思いながら読んだだろう。

ラストは好き嫌い分かれると思うが、私は嫌い。つまらない。

でもこの小説は、ラストは重要じゃない。本書では前作「犬の力」の後、2004年から2012年までの麻薬戦争を書いている。なぜメキシコはここまでひどくなってしまったのか、その過程を書き切っていることが本書の肝だと思う。

ちなみに、前著「犬の力」と本書「ザ・カルテル」を合わせて、リドリー・スコット+ディカプリオで映画化されるそうである。

9点/10点満点

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2017/01/31

ドン・ウィンズロウ/峯村利哉訳「ザ・カルテル(上)」感想。
メキシコ麻薬戦争小説。2017年01月11日読了。

本屋に行ったら、本書が平積みされていた。

ドン・ウィンズロウ/東江一紀訳「犬の力・上」2014年04月13日読了。8点
ドン・ウィンズロウ/東江一紀訳「犬の力・下」2014年04月14日読了。7点

の続編である。メキシコ麻薬戦争の当事者(取り締まる側と、取り締まられる側)を扱った、超一級の小説であった「犬の力」。個人的にはラストが気に入らなかったのでちょっと辛めの採点をしたが、

2014年に書いたブログより
>物語は、1997年、メキシコのある集落で、一族19人が麻薬マフィアに惨殺されたシーンから始まる。一族にマフィアの裏切り者がいた。裏切り者は、バナナのように顔の皮を剥がされて殺されていた。アート・ケラーは、自分の落ち度でこの事態を招いたと悲しむ。

この真相はそうとう後にならないと出てこないが、小説の仕掛け(開けっ広げな伏線)としては有効だった。

その続編である。これは読まなくてはならない。

とはいうものの、文庫本なのに1冊1200円+税。めちゃくちゃ値段が高い。ちなみに上巻は632ページ。ページ数を考えるとやむを得ない価格なのかな。

それと、訳者としての力量が素晴らしかった「犬の力」の訳者、東江(あがりえ)一紀氏が他界してしまったので、誰が翻訳するのかによって読後感が大きく異なるだろうという不安もちょっとあった。(引き受けた翻訳家=峯村利哉氏だって、東江氏と比べられる重責を覚悟のうえで引き受けられたのだろう)

「犬の力」は1975年から1999年までの戦いを書き、ラスト数ページに、2004年の主人公の心境が書かれている。

さて本書。

知っている人は知っていると思うが、メキシコ麻薬戦争はここからが本番である。19人の死に主人公アート・ケラーが心を痛めたいたのが前著「犬の力」。

しかしメキシコ麻薬戦争(全く知らない人はwikipediaを読んでね)では、1年で1万人以上が殺されている。麻薬組織同士の抗争VS警察(ほとんど買収されている)VSメキシコ軍(やっぱり買収されている)VSメキシコ政府直轄の麻薬撲滅チーム(親族が麻薬組織に殺されているので絶対に買収されない)という泥沼。

各勢力は、始めはただ敵対勢力を殺していたが、だんだんとエスカレートし、生きたままガソリンをかけて焼き殺す、生きたままチェーンソーで両手両足首を切って殺す、生きたまま額の髪の生え際を切って顔面の皮をはいで殺す。イスラム国も真っ青な方法で殺しまくった(というか、イスラム国の残虐さはメキシコ麻薬戦争を参考にしたと思われる)

まあ、そういうグロい部分も多いが、読み始めたら止まらなくなった。5日で読んでしまった。

「犬の力」をちょっと辛めの採点にしたのは、私が「犬の力」を読んだ2014年の時点で、メキシコ麻薬戦争は小説(「犬の力」)よりも酷くね? と違和感を抱いたからだと思いだした。


8点/10点満点

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2017/01/30

小川忠「インドネシア イスラーム大国の変貌」感想。
ルポ。2017年01月06日読了。

2016年9月に出版された本。著者は2011年9月から2016年3月まで世界交流基金ジャカルタ日本文化センター所長。それ以前にも1989年から93年まで4年間、世界交流基金の職員としてインドネシアに赴任。

その著者が2016年までの最新のインドネシア情報をコンパクトにまとめたのが本書。

非常に良い。

p16
ナショナリズムは民族ナショナリズム、宗教ナショナリズム、領域ナショナリズムに大別でき、インドネシアは領域ナショナリズムを基盤とする。

→インドネシアにはキリスト教徒や仏教徒もいるので宗教で国をまとめているのではない。また民族もいろんな人種が混ざっている(マレー系、ジャワ系、中国系、インド系、ミクロネシア系等々)ので民族ナショナリズムでもない。このエリアに住んでいる人は皆インドネシア人として一致団結しよう、という領域ナショナリズムである。


p19
インドネシアの憲法で宗教に関する記述は、「唯一神への信仰」とあるのみ。

→つまりユダヤ教、キリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教、上座部仏教などを信仰している事。逆にいえば、無宗教はダメ。

p40
1948年から62年まで西部ジャワで、1949年から65年まで南スラウェシで、53年から62年までアチェで「イスラーム国家」の樹立を求める反乱が続発した。

→インドネシア独立直後、多数派のイスラム教を国教としなかったことに不満を持つ国民があちこちで暴動を起こしていたとのこと。前述の宗教ナショナリズムを採用しなかったということ。もし独立時、イスラム教で国をまとめようとしていたら、現在のパキスタンのような状況になっていたのだろうと推測。(インドネシアは国をまとめるのに宗教を使わなかったので、西側先進国も支援しやすかった)

p76
ユドヨノ政権が誕生してから教育に力を入れた。就学率が如実に上昇している。
初等教育 2004年90%→2014年92%
中等教育 2004年55%→2014年83% (注:日本でいう中学と高校)
高等教育 2004年17%→2014年32% (注:日本でいう専門学校、短大、高専、大学)

→本書とは別に仕事案件でインドネシアを調べていたら、インドネシアの15歳から24歳は人口の17%、約4400万人いる。大ざっぱな計算ではあるが、その32%が高校より上の学校に行っているのでその数1400万人。単純な人数でいったら、日本の大学在学者数より多いのかも。

ちなみにインドネシアの出生率は数年前2.6→2015年データでは2.13まで下がってきているので、各家庭が子供の教育にかけるお金はこれまで以上に増える。

p160
フランス「シャルリ・エブド」のムハンマド(モハメッド)風刺画の端を発したテロは、テロという卑劣な行為で言論の自由を脅かしたということで、インドネシアの穏健派ムスリムの間でも同情論があったが、「シャルリ・エブド」の風刺画が公開されたら、一気にトーンダウン。

→こんな奴らをかばうんじゃなかった的な話です。言論の自由はある。けど侮辱は侮辱である。侮辱を暴力で解決していいのか?という話になりがちだけど、侮辱は言葉(絵)の暴力です。まあここいらは、たぶん100年かかってもお互い分かり合えないところだけれども。

p177
世界で日本語を学んでいる人の数(2012年)は398万人。そのうち87万人がインドネシア。うち84万人は中学、高校で学んでいる。これはインドネシアの高校カリキュラムで、高校で第2外国語(第1はもちろん英語)を必修としたから。ただし2013年から第2外国語の必修が外れたので、これから下がるとの予測。

p188
1977年に福田赳夫首相がマニラで東南アジア外交の理念について演説した「福田ドクトリン」は評価が高い。

→ぜんぜん知りませんでした。

p193
日本がインドネシア独立を支援したので、インドネシアは建国以来の親日家である、という人世代前のインドネシア人がきいたら笑ってしまうような歴史観が日本に存在している。

→第二次世界大戦時、日本は石油目当てでインドネシア征服した。1980年代はその記憶が残っている人が大勢いた。

敗戦後、朝鮮戦争特需で日本の商業界は活気づき、傲慢な猛烈サラリーマンが傲岸不遜な態度で商売をしていた。

それらの記憶が残っている1980年代までは、インドネシアはそれほど親日ではなかったとのこと。


面白かった!


9点/10点満点

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2017/01/29

ジリアン・テット/平尾光司監修/土方奈美訳「愚者の黄金」感想。
ルポ。2017年01月02日読了。

2017年最初の一冊(読み始めたのは年末からだけど)は、日本ではリーマンショック(2008年)と呼ばれている、アメリカのサブプライム住宅ローンの崩壊(2007年)に端を発した世界金融危機についての、ものすごく丹念に取材したルポ。

本書は、1994年6月にJ・P・モルガンの世界中の若い社員がフロリダに集まったところから始まる。彼らはスワップ部門に属していた。デリバティブの一部門である若い彼らには、これからの金融界を担う新しい商品の開発を任された。

そこで生まれたのがクレジット・デフォルト・スワップCDS。すさまじく単純化していうと、

銀行が融資を行うのに際し、貸し倒れリスクが高い場合、普通は利息を高くして貸し出す。しかし相手が長年取引している名門企業で、高い利息に不満を言ってきた場合、銀行は悩む。

そこでCDS。これは名門企業が倒産するリスクを数値化し、倒産しない限りずっと配当がもらえます、でも倒産したらパーになる。という証券。J・P・モルガンがCDSを作ったばかりの頃は、CDSは一般に流通させるものではなく、保険会社や資金がある大手企業に直接売り込んで(相対あいたい取引)、引き受けてもらっていた。

名門企業が銀行への借金を完済させたらCDSはそこで終わり。元本は引き受け先の会社に戻ってくる。

通常銀行は自己資本規制(貸出残高の8%(国によって違う?)はキャッシュを持っていなければならない)により、常に数百億円から数兆円のキャッシュを持っていた。これを貸し出せないのはもったいない。そこで銀行が倒産することをCDSにして売ったらどうなる? ということをFRS(連邦準備制度)とのバトルを経て、FRSが折れて、自己資本規制を下回ってもCDSで保障されてりゃ余ったキャッシュを貸しても良い。

ということになり、全世界中の銀行が狂喜乱舞。

でもCDSを作り出したJ・P・モルガンは中途採用をほとんど行わない保守的な銀行だったため、世界の動きがイマイチわからなかった。(J・P・モルガンはチェース・マンハッタンに買収されJPモルガン・チェースになった。その経緯なども詳しく書かれている)

世界中のメガバンクが独自のCDSを大量に作り、証券化し、一般人手を出せるようになり、挙句の果てにはJ・P・モルガンが「これはやったらアカン」と判断していたプライム住宅ローン(※)でもCDSが設定され、

※プライム住宅ローン:サラリーマンのように定期収入がある人向けの住宅ローン。
 サブプライム住宅ローン:住宅ローンの審査に落ちた人向けに、高利息で貸し出す住宅ローン。通常は変動金利を用いていて、ローン借り入れ後5年くらいは低金利、6年目から金利が倍増となる。

これはまずいんじゃないの?とJ・P・モルガンのチームが懸念していたら、サブプライム住宅ローン危機が発生し、世界金融危機につながった。

というお話。

ルポなので実在する多くの銀行員に取材し(J・P・モルガンが多いけど、いろんな銀行員の話が載っている)、金融工学と呼ばれる難しい学問を何とか平易な言葉で表している。

これは素晴らしい名著だ。ルポとしての真実味、金融工学を平易な言葉で伝える力(日本語翻訳も非常に良い)、そしてルポでありながら登場人物に魅力を与える著者の文章力。

この本を一冊読むだけで、大学の経済学学部の単位がもらえそうなくらいの圧倒的な内容である。

素晴らしい。

べた褒めなのに10点満点じゃないのはなぜ?

それはやっぱり難しいから。平易な言葉で書かれていても、金融工学が難しいのは変わらない。この本を読んでいる途中で何度wikipediaを開いたことか。

そして今、知ったような気になってこの感想文を書いているけど、読んでから既に1か月経っていて、この感想文に書いたことが間違っていないかビクビクである。(「理解した」と「たぶん理解した」にはすごい隔たりがあるんだよね)


9点/10点満点

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2017/01/28

エルヴェ・ファルチャーニ/アンジェロ・ミンクッツィ/芝田高太郎訳/橘玲解説「世界の権力者が寵愛した銀行 タックスヘイブンの秘密を暴露した行員の告白」感想。
回顧録。2016年12月23日読了。

著者はフランス・イタリアの二重国籍を持ちITエンジニアで、スイスのHSBC(銀行)のプライベート・バンキング部門の情報システムで働いており、そのときに知ったHSBCのプライベート・バンカー(超富裕層のみを対象とする銀行員)の脱税幇助を告発した人。脱税者にはフランス人、スペイン人が多く、日本人もいた。

原著は2015年に出版された。

単純にスイス警察に告発しても埒が明かない(スイスの法律は銀行の顧客データを守る)ことを知っていた著者は、仲間とともに脱税者(脱税していない顧客も含まれる)のデータをクラウドにアップし、フランスのマントン(イタリアとの国境に近く、モナコの隣)の著者の両親の家でクラウドデータにアクセス。

このデータにアクセスすることはスイスの法律に違反しているので、スイスの警察がフランスの憲兵と一緒にマントンにやってきて事情聴取しようとするが、フランスの憲兵がそれを阻止。(注:スイスはEU非加盟)

最終的にはスペインで捕まる。

なぜこんなまわりくどいことをしたかというと、フランスやスペインの警察が間に入ることで、フランスやスペインの警察が証拠であるクラウドデータにアクセスし、一人の犯罪者(著者)から公式に得た証拠から、芋づる式に脱税の証拠を手に入れさせるためである。違法に入手したデータは証拠にならない。


というようなことを著者視点で書かれているのだが、すさまじく読みづらい。

時系列は行ったり来たりだし、法的な側面の説明も少ないし、仲間の存在などの前後関係も説明不足。

橘玲氏の解説がなかったら投げ出したくなるほど読みづらかった。


それでも投げ出さなかったのは、プライベート・バンカーの「金持ちから得られる手数料収入(=自分の給料)が何物にも勝る」的な価値観が面白かったから。

でもこの本は他人には勧められないなあ。


6点/10点満点

2016年に読んだ本の感想がようやく終わりました。次回更新から2017年分になります。

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2017/01/27

NHK「東海村臨界事故」取材班「朽ちていった命 被曝治療83日間の記録」感想。
ルポ。2016年12月21日読了。

1999年9月30日、茨城県東海村にある核燃料加工施設「JCO」で臨界事故が発生した。臨界事故とは、ある程度まとまった量の放射性物質(何もしなくても核分裂して中性子を放出)が、制御できないままに連鎖反応を起こすことである。

(もう少し説明すると、放射性物質が核分裂し放出された中性子が別の放射性物質にぶつかり、ぶつかった別の放射性物質はぶつかったことをきっかけに核分裂し新たな中性子を放出する。これは普通の現象である。連鎖反応とはこれが連続的に起こる現象。原子力発電はこの現象を人為的にコントロールしている。臨界事故とは、連鎖反応を人為的にコントロールできなくなった状態をいう)

臨界事故を防ぐために、核燃料加工工場では正規マニュアルに従って作業する。しかしJCOは作業を簡略化するため裏マニュアルを用い、更に事故当日は裏マニュアルすら無視したやり方で作業していた。加工作業を行っていた3人が1-20シーベルト被曝し、病院に緊急搬送された。(ミリシーベルトやマイクロシーベルトではない。マイクロシーベルトの100万倍以上の被曝である)

3人は国立水戸病院に運ばれたのち、千葉市にある放医研(放射線医学研究所)に転送された。

本書は、3人の中で最も被曝量が大きかったA氏の治療記録である(本書では本名が書かれているが、ネットにある公式記録などでは本名が載っていないので、当ブログも本名は載せない)。

入院2日目、A氏に目立った変化はなく、まだ普通に喋ることができた。

3日目、放医研から東大病院に転院。右手が腫れていてA氏も痛いと言うが、まだ普通に喋っていた。

5日目、看護婦がA氏の結婚のなれそめを聞くなど、まだ会話ができた。

7日目、A氏の骨髄細胞の染色体を写した顕微鏡写真が届いた。染色体が完全に壊れていた。すなわち、今後新しい細胞が作られることが無いということである。妹から採取した末梢血幹細胞の移植を行った。

11日目、A氏はまだ喋ることができた。しかし、胸に貼った医療用テープをはがすと、その部分の皮膚が丸ごとくっついてきた。以降、医療用テープは使えなくなった。呼吸の状態が悪くなってきたため、酸素マスクを使うことになった。顔に密着させるので、付けている間は苦しい。A氏は「もう嫌だ」「やめてくれ」「帰りたい」「俺はモルモットじゃない」との言葉を漏らす。

国内で未承認の薬が何種類も投与されていた。

18日目、まだA氏の意識はある。「痛いですか」の問いに、首を縦や横に振っていた。末梢血幹細胞の移植の効果が現れ、白血球が増えた。

20日目、A氏はローリングベッドという、床ずれを防ぐベッドに移され、全身が火傷のような症状を示してきたため、皮膚を圧迫しないようなパッドで周りを固められた。鎮静剤で寝たきりの状態が長く続くようになった。

26日目、根付いたはずの妹の末梢血幹細胞だったが、染色体が壊れているのが確認された。

この頃には、全身の皮膚から染み出した体液が1日1リットルを超えていた。


このような描写が続き、59日目に心停止するも、心臓マッサージで心臓は再び動き出す。だが意識はもうない。
A氏は83日目に亡くなった。

読んでいる途中から、治療と人体実験の境目は一体どこなのか考えさせられた。


7点/10点満点

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2017/01/26

ランド・ポール/浅川芳裕訳「国家を喰らう官僚たち アメリカを乗っ取る新支配階級」感想。
米国論。2016年12月15日読了。

著者のランド・ポールは、アメリカの現職上院議員(共和党)。2016年の大統領候補として共和党の予備選挙に出馬するも、トランプに敗退した。

本書は、アメリカのバカげた官僚組織について、豊富な実例をもとに徹底糾弾している本である。

アメリカは銃社会である。公務員が公務で銃を使えるかどうかに関しては、アメリカ人を含めて世界中の大多数の人が警察や軍隊だけだと思っている。しかし、農務省、魚類野生動物局、環境保護庁などの官庁が完全武装したSWAT(特殊部隊)を持っていると聞いたら驚くに違いない。

農務省(USDA)は、農業製品について監督している。無殺菌牛乳を生産している酪農家が、無殺菌牛乳の危険性を知った上で購入している人に販売したところ、無殺菌牛乳の販売は許可されていないとして農務省SWATが酪農家を急襲し、無殺菌牛乳を押収した。

ギブソン社のギター工場が魚類野生生物局(FWS)の武装工作員に急襲され、ギターの原材料を差し押さえられた。最終的に判明した差し押さえ理由は、マダガスカルから違法な木材を輸入したから。しかし、なぜ魚類野生生物局が?

また魚類野生生物局は、ホンジュラスからロブスターを輸入したアメリカ商人を急襲した。ホンジュラスの法律に違反した未成熟なロブスターだからという。しかし、当のホンジュラス政府は「違法じゃないですよ」と公式回答した。にもかかわらず、魚類野生生物局はこの商人を犯罪者として廃業に追い込んだ。

環境保護庁(EPA)は、自宅の庭を整地した移民を急襲し逮捕した。理由は「水質清浄法」違反。移民の自宅の庭は法律で保護されるべき「湿地」であり、湿地は許可なく土壌改良してはならない。その土地がからっからに乾いていても、一番近くの川まで10㎞離れていても、環境保護庁が湿地と認定した土地は湿地であり、整地することすら許されないのだ。


というようなことがてんこ盛り。うろ覚えでこの感想文を書いているので、細かなところは齟齬があるやもしれず。ご了承賜りたく。


しかしアメリカ、ひどいね。というかバカだね。

ちなみに作家(兼出版社旅行人社長)の蔵前仁一さんも本書のレビューを書いています。


7点/10点満点

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2017/01/25

川島博之「電力危機をあおってはいけない」感想。
電力論。2016年12月11日読了。

東日本大震災が発生した2011年の10月に出た本。「「作りすぎ」が日本の農業をダメにする」と同じ著者。

農業と違って本書はイマイチ。それでも、

温室効果ガスを25%削減するという鳩ポッポの公約は、日本の人口はこれから減っていくのだから、放っておいても達成できる。

バイオマスエネルギー(生ごみや間伐材などを使って発電する)に関して、2011年2月に総務省評価局が「過去5年で6兆5500億円が税金がバイオマス関連事業に投入されたが、見るべき成果は何もなかった」とこき下ろした。

など、いくつか興味深いところもあったが、全体的にイマイチ。


5点/10点満点

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2017/01/24

デイナ・プリースト/ウィリアム・アーキン/玉置悟訳「トップシークレット・アメリカ」感想。
米国防。2016年12月09日読了。


◆内容紹介(Amazonより引用)
9.11以降、テロとの闘いという大義名分のもとに、アメリカでは雨後の筍のように機密機関が生まれ、膨大な「最高機密」を扱うプログラムが立ち上げられた。1200を超える政府組織、25万人以上の従業者、そして政府から業務を請け負う民間会社の人員を含めると、じつに85万人以上の人間がなんらかの「最高機密」にアクセスしているという異常事態となっている。無数の最高機密に覆われ、ジャングルのごとき迷宮と化したアメリカの現実を、ワシントンポストのベテラン記者らが精緻な取材によって暴き出す。

◆感想

アメリカ国内には実に多くのトップシークレットがある。価値のない情報までトップシークレットに指定されてしまったため、膨大な数のトップシークレットが生まれてしまった。

トップシークレットとは何ぞや?いったいどのくらいの情報がトップシークレットになっているのか? をワシントンポストのデイナ・プリースト氏と元アメリカ陸軍情報分析官ウィリアム・アーキン氏が調べたルポ。

上述の内容紹介にあるように、トップシークレットにアクセスできる人物は85万人に上る。ここまでくるともはや機密情報でも何でもない。

本書はそういうアメリカ官僚の無駄を暴き出した本。呆れちゃいますね。でも他所の国のことなので、日本人である私にあまりビビッと来るものが無かったというかなんというか。

以下は私が面白いと思った箇所。

p36-37
大統領はCIAに指示を出すとき、事前に議会の承認を必要としない。大統領が求めれば、CIAは外国政府を転覆することさえ試みる。それが失敗した例がキューバ、北ベトナム、ニカラグア、アンゴラなどであり、成功した例がチリ、グアテマラ、コンゴ、イラン、そして2回成功したのが、よりによってアフガニスタンだ。

p51
CIAと外国のパートナーとの関係は、メディアが伝えるよりずっと強固だ。とくにイギリス、オーストラリア、カナダ、ドイツ、ヨルダン、ポーランド、フランス、サウジアラビアなどの情報機関との関係は鉄壁と言えるほど堅い。

CIAは大統領権限だけで動かせるのか。それはなかなか恐ろしい(でもトランプはCIAに喧嘩売ったからなあ)


6点/10点満点

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2017/01/23

川島博之「「作りすぎ」が日本の農業をダメにする」感想。
農業論。2016年12月03日読了。

端的にいうと、世界中で食糧は余っている。

ということを世界各国のデータ(FAO=国連食糧期間など)から導き出し、かなりの説得力をもって

「日本(&アジア)の農業は生産性が低いから、世界市場で価格競争力が無い」

という話に結びつけています。つまり、日本の農家が儲からないのは、需要はそれほど変動しないのに、同じ作物を同じ時期に出荷するから値崩れする。ちょっと時期をずらせば高値で売れるのに、収穫に携わる人手の問題とかいろんな問題があって、結局みんな同じような時期に出荷する。だから農家は儲からない。

例として挙げられていたのは、兼業農家(普段はサラリーマン、土日は農家)の場合、収穫と出荷は土日に偏重する。だけど野菜を買う主婦は毎日買いに来る。だから月曜日と火曜日は野菜が安い。

的なことが書かれていて、なるほどなあと思ったのである。

この考えはそのままグローバル農家戦略に通じ、世界的に需要が活発なのに供給が追い付かない野菜(根菜は保存がきくのでどちらかというと保存がきかない野菜の話)野菜を作れば、野菜輸出にかかるいろんな面倒ごとに対処しなければならないけど、日本の農家だってもっと儲けられますよ。

というような話になる。

そうなんだよ。私の中学生の同級生で、大学出た後農家を受け継いだ彼は、近隣の中国や台湾や韓国に生鮮野菜を出荷する方法を必死で練っていて、それが実って今や年商数億(利益ではない)。

日本は儲けを度外視した兼業農家に頼りすぎなんじゃないですかねー。


8点/10点満点

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2017/01/22

架神恭介/辰巳一世「完全教祖マニュアル」感想。
宗教分析。2016年11月30日読了。

宗教の教祖になるためのマニュアル本である。

本書は徹頭徹尾マニュアルとしての体裁を保っている。もちろんパロディだ。

世界中にいろんな宗教がある。だが意外と根底にあるもの(思想)は同じようなことだったりする。それを分析し、マニュアル本という体裁をとってパロディ化したのが本書。

キリスト教(カトリック)が硬直していたのでプロテスタントが生まれた。しかしプロテスタントよりもっと早い段階、西暦150年にモタノス派という一派が「今のキリスト教の状況は硬直化している、原点回帰せよ」という運動を起こす。こういう連中は異端と断罪され虐げられたが、現在でも東方正教会諸派として世界各地に残っている。

イスラム教の断食は有名だが、仏陀も断食していたし、仏教諸派も修行の一環で断食とかあるじゃん。

仏教発祥の地インドでは、仏教は主張が難しすぎて庶民に根付かなかった。で、日本にやって来た仏教(浄土教)は、「南無阿弥陀仏と唱えれば極楽に行って成仏できるよ」と庶民にも分かりやすい方法で布教した。

などのことが書かれている。半分笑いながら楽しく読みました。


8点/10点満点

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2017/01/21

モハメド・オマル・アブディン「わが盲想」感想。
自伝エッセイ。2016年11月28日読了。

本書の著者は盲目のスーダン人で、19歳のとき国際視覚障碍者援護協会の招聘で来日。福井県立盲学校で日本語や、日本語の点字や鍼灸を学ぶ。その後筑波技術短期大学を経て東京外語大に入学。同大学院を経て、現在は同大学特任助教。

本書は盲目のスーダン人が、盲人向けの日本語入力ソフト(漢字変換FEP)を使って日本語で書いたエッセイである。

スーダンは親族のつながりを重視するため、いとこ婚(=近親結婚)が多いため身体障碍者が生まれやすい環境にある。スーダンで先天的盲人は珍しい存在ではなく、それゆえ盲人の扱いや盲人の生き方は日本より進んでいる部分もある(らしい)。

著者は生まれたときは弱視だったが12歳で失明。

本書は、スーダンで大学に通っていた著者が、ひょんなことから日本が盲人留学生を募集していることを知り、意を決して応募。父親をなんとか説得して来日。日本の文化に苦しみながら馴染み、イスラム教徒でありながら酒におぼれ、これではいかんと兄弟経由でスーダン人在住のスーダン女性と電話でお見合い(見てはいないか)、猛烈アタックの末、結婚。奥さんも来日。

というようなことを、ぶれることなく徹頭徹尾面白おかしく綴っているエッセイである。

※スーダンは北部にある政権はイスラム教徒でイスラムごり押し。南部はキリスト教徒が多数派。それゆえ宗教対立が激しく、南部の一部は南スーダンとして独立した

エッセイなので内容は紹介できない(エッセイは著者が書く文章を楽しむジャンルなので、紹介しても意味がない)。

あまりに面白くて、読み始めたら止まらなくなり1日で読んでしまった。とだけお伝えする。


8点/10点満点

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2017/01/20

池内恵「中東 危機の震源を読む」感想
中東分析。2016年11月27日読了。

2009年に出版された本。イスラム研究家としての池内センセの知名度が上がり、ISISが台頭してきた2015年に増刷になった。この手の本が出版から6年もたって増刷ってのは珍しいんじゃなかろうか。

本書は、新潮社の月刊誌フォーサイトに2004年から連載されていた「中東・危機の震源を読む」の53回分(約4年半)の原稿を連載順に並べたもの。フォーサイトは以前定期購読をしていたが、今は紙媒体はやめてしまってWebマガジン(基本有料、一部無料記事あり)になっている。国際情勢のエキスパートが数多く執筆していて、日本有数の優れた情報源。

本書を出版にあたって内容を再構成するなどは一切なく、単純に連載順に並んでいる。そのため前半部(書かれた時期が古い)(は「この先、○○国の政権は厳しい局面を迎えるだろう」的な文言が出てくるのだが、後の章(書かれた時期が新しい)で「やはりこのように事が進んだ」的な解説が出てくる。結果が分かっていることなので、読んでいてちょっとムズムズした。

全体的には、池内センセの目線を知る本、という印象。悪くはないんですけど、ムズムズするのです。


6点/10点満点

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2017/01/19

白石隆「崩壊 インドネシアはどこへ行く」感想。
近代史。2016年11月19日読了。

著者の白石隆氏は「海の帝国―アジアをどう考えるか」2013年01月10日読了。7点(難しかったー)。を書かれた人で、東南アジア、中でもインドネシア政治研究のエキスパート。現在はJETROのアジア経済研究所所長

本書は、インドネシアの独裁者スハルト政権が崩壊した(1998年)翌1999年に出版された本。

スハルト政権時、スハルトファミリー&取り巻きがどのようにインドネシアを食いものにしていったのか、スハルト退陣を受けて3代目大統領となったハビビが出版時点でどのような政治運営を行っているのか、などが書かれている。

インドネシア政治のディープな話なので内容紹介は割愛。

スハルト政権崩壊はもう19年も前のことになる。今のインドネシア経済の最前線にいる40代の人たちはスハルト政権下の良い面と悪い面を両方見ている。30代の人はスハルト政権末期の悪い面を覚えている。20代の人はスハルト政権のことをよく知らない。10代の人はスハルトを知らない。ハビビの後、ワヒド、メガワティ、そしてスシロ・バンバン・ユドヨノ(この第6代大統領は評価が高い)、そして現大統領のジョコ・ウィドドと、インドネシアは確実に西側民主主義政治が根付いてきている。

これからのインドネシアを担う人材は、政治の力で豊かな社会を作れると確信しているに違いない。

インドネシアなんてイスラムで子だくさんで貧乏人がたくさんいる、と思っているあなた。それは間違い。古い。

今のインドネシアは人口が2億5800万人(日本は1億2700万人)、
そのうち24歳以下が1億1000万人(日本は2900万人)、
大学進学率が32%(調査機関によっては40%を超えたとも)(日本は約50%)、

単純計算してください。大学生の数では、日本はすでにインドネシアに抜かれている可能性が高いのですよ。

また出生率が2.6(調査機関によっては2.13という数字も)(日本は1.41)と先進国の数字に近づいてきています。これの意味するところは、少ない人数の子供にたっぷり教育費をかける、ということがインドネシアでも起きているのですよ。


7点/10点満点

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2017/01/18

宮岡伯人「エスキモー 極北の文化誌」感想。
民俗誌。2016年11月17日読了。

言語学者である著者が、少数民族であるエスキモーの言葉を調べるためアラスカに数年滞在調査し(アラスカ大学で日本語講師兼エスキモー語研究者として在籍)、エスキモー語とエスキモー文化を紹介した1987年に出版された本。

p48
1982年の推定で、エスキモー人口はソ連1,200人、アラスカ34,700人、カナダ23,000人、デンマーク(グリーンランド)42,000人。合計で約10万人。

p62によると、この少ない人口でありながらエスキモー語は9つの言語に分類されるのだそうだ。

エスキモー語の特長として、例えば日本語で「あの熊」という表現が実に26通りもあるとのこと(p138)。住んでいる場所が年中雪や氷におおわれている台地で、白夜(や極夜)の季節ともなると北とか南という方角表現すら意味をなさないため、明確な指示詞が発達したのだろうとのこと。

出版された1987年の時点でエスキモー文化は廃れかかっていると書かれている。2017年の現在は一体どうなっているのだろう。


6点/10点満点

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2017/01/17

墓田桂「難民問題 イスラム圏の動揺、EUの苦悩、日本の課題」感想。
国際情勢分析。2016年11月11日読了。

2016年2冊目の10点満点

◆内容(Amazonより)
2015年9月、トルコ海岸に漂着した幼児の遺体は世界に衝撃を与えた。
シリアなどイスラム圏出身の難民を受け入れる輪が、ドイツを中心に広がる。
だが11月のパリ同時多発テロをはじめ、欧州各国で難民と関係した事件が相次いで発生。
摩擦は激化し、EU離脱を決めた16年6月のイギリス国民投票にも影響した。
紛争や弾圧に苦しむ難民を見過ごして良いのか、しかし受け入れる余裕はない――欧州の苦悩から日本は何を学ぶか。

【目次】
第1章 難民とは何か
1 歴史のなかで
2 保護制度の確立へ
3 21世紀初頭の動向

第2章 揺れ動くイスラム圏
1 アフガニスタンからの連鎖
2 「アラブの春」以降の混乱
3 脅威に直面する人々
4 流入に直面する国々

第3章 苦悩するEU
1 欧州を目指す人々
2 限界に向かう難民の理想郷
3 噴出した問題
4 晴れそうにない欧州の憂鬱
5 問題の新たな展開

第4章 慎重な日本
1 難民政策の実情
2 シリア危機と日本
3 関連する課題と今後の展望

第5章 漂流する世界
1 21世紀、動揺する国家
2 国連の希薄化、国家の復権

終 章 解決の限界


◆感想
読み終わった後Amazonレビューを見たら、けっこう評価が分かれている。総合では★4つだけど、★1つや★2つの評価もある。

私は10点満点をつけた(Amazon基準だと★5つ)。

難民という概念はどこから始まったのか。本書では紀元70年のユダヤ戦争(ローマ帝国vsユダヤ)から説明を始めている。

第一次世界大戦後に、国際赤十字委員会(ICRC)からの要請で国際連盟が難民を保護する活動を開始。国際連盟が国際連合に代わり、現在の国連難民高等弁務官へと発展し、パレスチナ難民への対処が本格的な第一歩となる。

現在のシリアにつながるイスラム圏の動乱に関しては、ソ連のアフガニスタン侵攻(1979年)が端緒であったとし、そこからシリアまで一気に話を持っていく。

イスラム系の難民がなぜEUに行きたがるのか。EUはなぜ大勢の難民を受け入れたのか。EU加盟国間で意思にずれがあるのはなぜか。

そしてそれらを鑑み、日本の過去がどうであったのか(ベトナム戦争のボートピープル)、現在の対応はどうなのか、未来はどうすべきなのか。

これらを新書の枠の中で、削るべきところはばっさり削り、難しすぎず易しすぎない、著者の主張したいところはきちんと主張する。

この手の本を何冊か読んでいる私にとって、復習を兼ねながら新しい知識を得られる、実にちょうど良い本であった。

素晴らしい。


10点/10点満点


のだが、この本を読んだ後の2016年末に、NHK-BS世界のドキュメンタリー「オーストラリア 難民“絶望”収容所」を見たら、ちょっと印象が変わってしまった。

オーストラリア(豪州)は、現在世界で最も過激な難民排除政策をとっている。Newsweekの関連記事

例えばミャンマーのロヒンギャ族(仏教国ミャンマーのイスラム教徒・少数派・アウンサンスーチー政権下でも軍や警察に弾圧されている)が船にすし詰めになってオーストラリアに来る。オーストラリアは難民受け入れを拒絶し、パプアニューギニアのマヌス島または太平洋の島国ナウルに設置した難民センターに強制収容している(両国にはオーストラリア政府から数十億円の金が払われている)。難民の選択肢は自国へ戻るか、難民受け入れ提携をしたカンボジアに移住するかの二択(カンボジアも大金を受け取っている)。拒否すれば難民センターにただ居るだけ。仕事もなく、食事や医療も満足とはいえない環境で、難民の子供に教育すら受けさせない。難民は、いつ難民センターを出られるか分からない(二択を拒否したから)。自分の前途に絶望した難民が自殺しても、オーストラリア政府は対策を取らない。

難民センターで働く職員やボランティアは、難民センターで見聞きしたことを一切口外してはならない。口外すると禁固2年の実刑判決を受ける。このドキュメンタリーは、口外すると実刑判決、という法改正がなされる前に隠し撮りされたものである。

このことについて本書ではp224で軽く触れられているが、オーストラリア政府は億円単位の金を使ってまで難民をどうにかしようと思っている(但し自国には入国させない)という見方もある。難民問題のオフショア化(≒アウトソーシング)とのこと。それは確かにそうだな。

難民問題は難しい。なので10点満点の評価は変更なし。

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いわゆる新書。2016年11月01日読了。