2017/01/19

白石隆「崩壊 インドネシアはどこへ行く」感想。
近代史。2016年11月19日読了。

著者の白石隆氏は「海の帝国―アジアをどう考えるか」2013年01月10日読了。7点(難しかったー)。を書かれた人で、東南アジア、中でもインドネシア政治研究のエキスパート。現在はJETROのアジア経済研究所所長

本書は、インドネシアの独裁者スハルト政権が崩壊した(1998年)翌1999年に出版された本。

スハルト政権時、スハルトファミリー&取り巻きがどのようにインドネシアを食いものにしていったのか、スハルト退陣を受けて3代目大統領となったハビビが出版時点でどのような政治運営を行っているのか、などが書かれている。

インドネシア政治のディープな話なので内容紹介は割愛。

スハルト政権崩壊はもう19年も前のことになる。今のインドネシア経済の最前線にいる40代の人たちはスハルト政権下の良い面と悪い面を両方見ている。30代の人はスハルト政権末期の悪い面を覚えている。20代の人はスハルト政権のことをよく知らない。10代の人はスハルトを知らない。ハビビの後、ワヒド、メガワティ、そしてスシロ・バンバン・ユドヨノ(この第6代大統領は評価が高い)、そして現大統領のジョコ・ウィドドと、インドネシアは確実に西側民主主義政治が根付いてきている。

これからのインドネシアを担う人材は、政治の力で豊かな社会を作れると確信しているに違いない。

インドネシアなんてイスラムで子だくさんで貧乏人がたくさんいる、と思っているあなた。それは間違い。古い。

今のインドネシアは人口が2億5800万人(日本は1億2700万人)、
そのうち24歳以下が1億1000万人(日本は2900万人)、
大学進学率が32%(調査機関によっては40%を超えたとも)(日本は約50%)、

単純計算してください。大学生の数では、日本はすでにインドネシアに抜かれている可能性が高いのですよ。

また出生率が2.6(調査機関によっては2.13という数字も)(日本は1.41)と先進国の数字に近づいてきています。これの意味するところは、少ない人数の子供にたっぷり教育費をかける、ということがインドネシアでも起きているのですよ。


7点/10点満点

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2017/01/18

宮岡伯人「エスキモー 極北の文化誌」感想。
民俗誌。2016年11月17日読了。

言語学者である著者が、少数民族であるエスキモーの言葉を調べるためアラスカに数年滞在調査し(アラスカ大学で日本語講師兼エスキモー語研究者として在籍)、エスキモー語とエスキモー文化を紹介した1987年に出版された本。

p48
1982年の推定で、エスキモー人口はソ連1,200人、アラスカ34,700人、カナダ23,000人、デンマーク(グリーンランド)42,000人。合計で約10万人。

p62によると、この少ない人口でありながらエスキモー語は9つの言語に分類されるのだそうだ。

エスキモー語の特長として、例えば日本語で「あの熊」という表現が実に26通りもあるとのこと(p138)。住んでいる場所が年中雪や氷におおわれている台地で、白夜(や極夜)の季節ともなると北とか南という方角表現すら意味をなさないため、明確な指示詞が発達したのだろうとのこと。

出版された1987年の時点でエスキモー文化は廃れかかっていると書かれている。2017年の現在は一体どうなっているのだろう。


6点/10点満点

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2017/01/17

墓田桂「難民問題 イスラム圏の動揺、EUの苦悩、日本の課題」感想。
国際情勢分析。2016年11月11日読了。

2016年2冊目の10点満点

◆内容(Amazonより)
2015年9月、トルコ海岸に漂着した幼児の遺体は世界に衝撃を与えた。
シリアなどイスラム圏出身の難民を受け入れる輪が、ドイツを中心に広がる。
だが11月のパリ同時多発テロをはじめ、欧州各国で難民と関係した事件が相次いで発生。
摩擦は激化し、EU離脱を決めた16年6月のイギリス国民投票にも影響した。
紛争や弾圧に苦しむ難民を見過ごして良いのか、しかし受け入れる余裕はない――欧州の苦悩から日本は何を学ぶか。

【目次】
第1章 難民とは何か
1 歴史のなかで
2 保護制度の確立へ
3 21世紀初頭の動向

第2章 揺れ動くイスラム圏
1 アフガニスタンからの連鎖
2 「アラブの春」以降の混乱
3 脅威に直面する人々
4 流入に直面する国々

第3章 苦悩するEU
1 欧州を目指す人々
2 限界に向かう難民の理想郷
3 噴出した問題
4 晴れそうにない欧州の憂鬱
5 問題の新たな展開

第4章 慎重な日本
1 難民政策の実情
2 シリア危機と日本
3 関連する課題と今後の展望

第5章 漂流する世界
1 21世紀、動揺する国家
2 国連の希薄化、国家の復権

終 章 解決の限界


◆感想
読み終わった後Amazonレビューを見たら、けっこう評価が分かれている。総合では★4つだけど、★1つや★2つの評価もある。

私は10点満点をつけた(Amazon基準だと★5つ)。

難民という概念はどこから始まったのか。本書では紀元70年のユダヤ戦争()ローマ帝国vsユダヤ)から説明を始めている。

第一次世界大戦後に、国際赤十字委員会(ICRC)からの要請で国際連盟が難民を保護する活動を開始。国際連盟が国際連合に代わり、現在の国連難民高等弁務官へと発展し、パレスチナ難民への対処が本格的な第一歩となる。

現在のシリアにつながるイスラム圏の動乱に関しては、ソ連のアフガニスタン侵攻(1979年)が端緒であったとし、そこからシリアまで一気に話を持っていく。

イスラム系の難民がなぜEUに行きたがるのか。EUはなぜ大勢の難民を受け入れたのか。EU加盟国間で意思にずれがあるのはなぜか。

そしてそれらを鑑み、日本の過去がどうであったのか(ベトナム戦争のボートピープル)、現在の対応はどうなのか、未来はどうすべきなのか。

これらを新書の枠の中で、削るべきところはばっさり削り、難しすぎず易しすぎない、著者の主張したいところはきちんと主張する。

この手の本を何冊か読んでいる私にとって、復習を兼ねながら新しい知識を得られる、実にちょうど良い本であった。

素晴らしい。


10点/10点満点


のだが、この本を読んだ後の2016年末に、NHK-BS世界のドキュメンタリー「オーストラリア 難民“絶望”収容所」を見たら、ちょっと印象が変わってしまった。

オーストラリア(豪州)は、現在世界で最も過激な難民排除政策をとっている。Newsweekの関連記事

例えばミャンマーのロヒンギャ族(仏教国ミャンマーのイスラム教徒・少数派・アウンサンスーチー政権下でも軍や警察に弾圧されている)が船にすし詰めになってオーストラリアに来る。オーストラリアは難民受け入れを拒絶し、パプアニューギニアのマヌス島または太平洋の島国ナウルに設置した難民センターに強制収容している(両国にはオーストラリア政府から数十億円の金が払われている)。難民の選択肢は自国へ戻るか、難民受け入れ提携をしたカンボジアに移住するかの二択(カンボジアも大金を受け取っている)。拒否すれば難民センターにただ居るだけ。仕事もなく、食事や医療も満足とはいえない環境で、難民の子供に教育すら受けさせない。難民は、いつ難民センターを出られるか分からない(二択を拒否したから)。自分の前途に絶望した難民が自殺しても、オーストラリア政府は対策を取らない。

難民センターで働く職員やボランティアは、難民センターで見聞きしたことを一切口外してはならない。口外すると禁固2年の実刑判決を受ける。このドキュメンタリーは、口外すると実刑判決、という法改正がなされる前に隠し撮りされたものである。

このことについて本書ではp224で軽く触れられているが、オーストラリア政府は億円単位の金を使ってまで難民をどうにかしようと思っている(但し自国には入国させない)という見方もある。難民問題のオフショア化(≒アウトソーシング)とのこと。それは確かにそうだな。

難民問題は難しい。なので10点満点の評価は変更なし。

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2017/01/16

志賀櫻「タックス・イーター 消えていく税金」感想。
いわゆる新書。2016年11月01日読了。

タックスヘイブンを利用して税金逃れ(脱税)している話がメインと思い込んで読み始めたら違った。

税金を無駄に使っている官公庁と、それらにぶら下がって利権をむさぼる組織・企業、その利権の大本となる予算を決める国会議員(族議員)に関する話、つまり税金を食う連中の話がメインであった。

国の予算、年金、法人税、族議員、財政投融資、円高、行政改革、多国籍企業…日本の税金を食いものにしている存在、いろんな問題があることはよくわかったが、話を盛り込み過ぎてちょっとピンボケな印象。


6点/10点満点

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2017/01/15

高野秀行/角幡唯介「地図のない場所で眠りたい」感想。
対談。2016年10月19日読了。

私が好きなノンフィクション作家2人による対談。

両者、あるいは片方のファンであれば面白いでしょう。

両者のことを知らなくても、特に高野秀行氏は最近TV(TBSのクレイジージャーニー)によく出ているので、高野氏のことをもっと知りたいと思った視聴者が最初に手に取る一冊としたら最適な一冊かも知れない。

私は両者のファンなので、「ああ面白かった」という感想である。高野氏の本は95%くらい読んでいるし、講演会にも行ったことがあるので、うん、まあ、なんてゆーか、予想の範囲内の面白さっていうか。

学術資料検索にグーグル・スカラーというのを活用しているという話は興味を引いた。


6点/10点満点

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2017/01/14

岩瀬昇「原油暴落の謎を解く」感想。
いわゆる新書。2016年10月11日読了。

原油価格(リンク先は楽天証券)は2008年頃に140ドル台を付け、リーマンショックで40ドル前後まで急落、その後また100ドル台に戻し、2014年後半からまた急落、今は40ドル台。

本書の内容はタイトルそのままで、なぜ今原油価格が暴落しているのかを、三井物産で石油を扱ってきた著者(1948年生・延べ21年の海外勤務)がひも解く。

すごく簡単に言ってしまうと、世界最大の石油消費国中国の景気減退による石油需要の減少と、アメリカのシェールオイル、カナダのオイルサンド開発などによって供給が増したから、というもの。

とはいえ世の中そこまで単純ではないので、本書にはいろんな要因が書かれている。

石油に関する歴史にも触れているので、石油入門書としてはかなり良い。

私は「探求」というもっと素晴らしい本をすでに読んでしまっていたので、本書は復習のような感じだった。


7点/10点満点

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2017/01/13

勝川俊雄「魚が食べられなくなる日」感想。
警告。2016年10月06日読了。

著者は東京海洋大学産学・地域連携推進機構准教授。水産資源管理と資源解析が専門。著者公式ブログで日本の水産業の行く末を心配し、警鐘を鳴らしている。

本書の冒頭、p7に
「ピーク時は200万人とも言われていた漁業者は、今や17万人を切っています。跡継ぎのいない60歳以上が大半で、平均年齢は60.1歳(自営漁業者、平成20年)です。」

当然ながら漁業者が減っているので、漁獲量も減っている。本書帯には、
「日本の漁獲量は最盛期の4割以下、クロマグロ、ウナギは絶滅危惧種、サバは7割、ホッケは9割減、ニシン漁はほぼ壊滅状態……」

漁獲高が減っているのは、中国や韓国の漁船が漁場を荒らしているからだ! という意見に対してはp48
「外国船の違法操業がほぼ不可能な瀬戸内海や内湾部の資源も同じように減っているので、」

中国に関してはp52
「中国は大規模な養殖事業を展開しています。経営体の規模が大きく、利益も出ているので優秀な人材が集まり、研究開発が活発に行われています。世界細田の洋食国である中国の技術水準は、日本をはるかに凌駕しています。たとえば、日本はヒジキを養殖する技術が無いので、私たちの食卓に乗るヒジキは中国の洋食ヒジキに依存しています。」


本書のタイトルはやや煽りすぎと思うが、良書。


ではなぜ7点なのか。

それは、本書が小学館新書(2008年に作ったばかりのライトな新書)で、先日感想を書いた「ルポ ニッポン絶望工場」の講談社+α新書と同じく週刊誌の人気記事の延長のような売れ筋ライトな内容を狙った編集になっているため、私にとって物足りなかったから。

良い本だと思います。

7点/10点満点

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2017/01/12

アレックス・ゴールドファーブ/マリーナ・リトビネンコ/加賀山卓朗訳「リトビネンコ暗殺」感想。
ロシアの闇。2016年10月04日読了。

ロシアのFSB(KGBの後継機関)元中佐アレクサンドル・リトビネンコが、ポロニウムという放射性物質を使って暗殺された。(ポロニウムは強力なアルファ線を放出するが、アルファ線は紙切れ一枚で遮断できる。しかしポロニウムを体内に入れてしまうと、臓器が強力なアルファ線に曝され死に至る)

リトビネンコは、プーチンと対立するロシアの政商ベレゾフスキーに近く、アメリカの投資家ジョージ・ソロスの下で働いていた著者のゴールドファーブ(ソ連の反体制科学者で1970年代にアメリカに行く。亡命ではない)は、ソ連崩壊後のロシアに商機を見出すためにベレゾフスキーと交流し、ベレゾフスキーを介してリトビネンコと知り合う。(なお共著者はリトビネンコの妻である)

著者は政治経済の両面からロシアに深くかかわり、リトビネンコがトルコを経由しイギリスに亡命するのを手伝い(アメリカに亡命させるのには失敗した)、リトビネンコが病床で死ぬまで付き添った。

本書は、リトビネンコから聞いた彼の半生を追いかけながら、ロシアの政治を分析した本である(但し反プーチン側にいたのでそれなりにバイアスがかかっている)。

本書にはあまりにもディープなロシア人が多数登場するので(エリツィン政権時の安全保障会議書記とか、プーチン政権時の大統領府長官とか)、細かな内容紹介は割愛。

ロシア政治の闇、を知りたい方は読みましょう。


本書p445-によると、毒殺に使われたポロニウムは静電気を除去する装置に用いられる工業用放射性物質で、世界の生産量の97%がロシアのチェリャビンスク(2013年に隕石が落下して大騒ぎになった場所)近郊で作られている。その量年間85g(単位の間違えではないですよ)。そしてその多くはアメリカに輸出されている。

ポロニウム210は放射性崩壊(この物質の場合はアルファ崩壊)すると鉛206(安定同位体)に代わる。半減期は138日。サンプルに含まれる鉛の量と不純物の量を測定し、アメリカに輸出されたポロニウムのサンプルとを比較すれば、いつ作られたポロニウムなのか特定できるのだそうだ。なるほどなあ。


8点/10点満点

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2017/01/11

出井康博「ルポ ニッポン絶望工場」感想。
ルポ。2016年09月23日読了。

本書は、講談社+α新書 である。

この+α新書は講談社現代新書とは違い、週刊現代で人気が出たシリーズものを一冊にまとめたような感じのライトな内容である。一昔前までの新書という出版形態は、岩波新書に代表されるようにかなりまじめで堅くて、大学教授が出版社に金を払って出版させてもらっていた時代もある(著者が最低○○部を買い取る)。10年くらい前から出版社が出版不況に抗うため、新書でエッセイを出したり雑誌の延長みたいな新書がやたらと出版されていった。今は選書と呼ばれる出版形態が、一昔前の新書にとって代わってしまった。講談社現代新書は堅い本、売れ筋になりそうなライトなものは+αで出版する、という講談社の決意表明を表しているかのような出版形態である。ほんとかどうかは知らん。あくまで私の印象。

何を言いたいかというと、本書は週刊現代の人気シリーズを書籍化したようなライトな内容ということである(取材が軽いという意味ではない)。でも面白い。

政府が2020年に「留学生30万人計画」をぶち上げ、その結果日本にやってくるのは日本で出稼ぎをするために便宜上「留学ビザ」が欲しい自称学生たちで、彼らの受け入れ先は潰れかけの三流大学だったり日本語学校だったりする。そういう学校は学生が授業を満足に聞いていなくても関係ない。学費さえ払ってくれればいい。現地の学校でちゃんと勉強してまじめに公費留学生として推薦された学生ならともかく、そうでない自称学生は借金をして日本ににやってくる。

そういう自称学生はちょっと前までは中国人が多かったが、中国は豊かになってきたので、今の中国人は日本を目指さなくなってきているとのこと。本当に勉強をしたい中国人はアメリカを目指す。

今はベトナム人が多くやってきているとのこと。

民主党政権下の事業仕分けにより、留学ビザを発給するに値する学生かどうかをチェックする機関(日本語教育振興協会)がビザチェックの権限を失い、今は日本語学校が直接法務省に留学ビザの申請をしている。法務省は文科省ではないので学校(まともな学校か、営利目的だけの酷い学校か)に関する知見が乏しい。従っていろんな面でひずみが起きている。

本書では自称留学生にも取材し、自称留学生の側の意見もかなり盛り込まれている。

ライトではあるが、良書。


7点/10点満点

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2017/01/10

ジョージ・ミーガン/藤井元子訳「世界最長の徒歩旅行 南北アメリカ大陸縦断3万キロ」感想。
冒険旅行記。2016年09月21日読了。

アルゼンチンの南端ウシュアイアから北米アラスカまで、6年かけて南北アメリカ大陸を徒歩で旅行した著者の紀行文。

ウシュアイアをスタートしたときは日本人の恋人と一緒で、二人はアルゼンチンのメンドーサで結婚。パタゴニアと呼ばれる風の強い寒い台地、北部アルゼンチンを抜けボリビア、ペルー、エクアドル、コロンビア、ダリエン地峡(コロンビアとパナマの間にある湿地。パナマ運河を作ったアメリカですらここに道を作ることはできなかった)、パナマ、コスタリカ、ニカラグア、ホンジュラス、グアテマラ、

メキシコ(原著には書かれているが日本語版では割愛)、

テキサス、

アメリカ、カナダ(原著には書かれているが日本語版では割愛)、

を抜け、アラスカで家族と合流。

毎日数十キロ歩かなければ目的地までたどり着けないので、現地の人とのふれあいとか、観光名所的な場所とかほぼスル―。ときどき疲れて長い休みを取った場所以外は、基本的に歩いている描写がずっと続く。

後半部分のメキシコとアメリカとカナダがまるっと割愛されているので、読んでいる方としてはグアテマラからいきなりアラスカにワープしちゃったような感覚になり、摩訶不思議。

紀行モノが好きな人なら面白く感じるかもしれないが、割愛された部分が多すぎてがっかり感もある。


5点/10点満点

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2017/01/09

河田惠昭「日本水没」感想。
危機管理。2016年09月14日読了。

著者は防災・減殺・危機管理の専門家で、京都大学名誉教授。現在は「人と防災未来センター」長。

本書は水害の危険性を、過去事例(日本だけではなく、ハリケーン被害のアメリカ、チェコのプラハ、イタリアのベニス、タイのバンコク)をもとに、水害がどのように引き起こされ、なぜ被害が拡大していったのかを分析し、今後その教訓をどのように活かせば、有効な水害対策ができるかを説いた本。

著者が何度も繰り返し書いているのが都市の地下空間(東京だけではない)。ゲリラ豪雨がこれからもっとひどくなり、排水が追い付かないほどの急激な雨量になった場合、都市の地下空間があっという間に洪水になる恐れがある。防水柵があったとしても、目の前の浸水は防げるかもしれないが、よそから流れ込んでくる水は防げない。ビルとビルが地下でつながっていて、そのすべてに防水柵があるわけではないので防ぎようがない。日本の都市部における地下構造は統合的に管理している行政部門が無く、地下空間の統合的な防水対策は遅れている(というか対策されていない)。

過去事例に厚みを持たせるためか、やたらと数字(雨量やらダムの容量やら貯水率やら)が書かれている。読んでいてそんな細かい数字はどうでもいいよと思ってしまうことも多々あった。

また危機管理の観点から、他国で起きたテロの話も持ち出しているのだが、

P75
「2013年1月16日にイスラーム系武装集団がアルジェリアのイナメナス付近の天然ガス精製プラントにおいて引き起こした人質拘束事件において、日本人社員だけが犠牲になったことがあった。」

と書いているのだけれども、wikipediaには人質41名(うち日本人10名)のうち23人(うち日本人10人)が殺されたと書かれている。

この部分を読んだ時点で、調べもせずによくこんな適当なことを書けるなあ、と思い、以降は話半分で読んだ。

自分の属する組織に政府予算を回してほしいから一般受けしそうな話をどかどか盛り込んだ身内に向けた本なのだろう。という読後感であった。私が他人にこの本を勧めることは無い。


4点/10点満点

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2017/01/08

国枝昌樹「「イスラム国」最終戦争」感想。
いわゆる新書。2016年09月09日読了。

著者は2006‐2010年在シリア特命全権大使。著者の情報ソースはシリアのアサド政権関係者が比較的多く、著者自身アサド政権寄りの見解を示すことが多い。そのため、一部のジャーナリスト(アサド政権がIS壊滅作戦と称して反政府ゲリラおよび一般市民を攻撃しているのは政府による虐殺である、と主張している人たち)からとても嫌われている。

国際情勢を知る上で、片方だけの見解で物事を知った気になるのはよろしくない。シリアは「アラブの春」の流れでアサド政権下ろしが始まったが、アサド政権が倒れた後の具体的な出口戦略が無いまま内戦をたきつけた欧米政府や西側マスコミの責任はどうなのよ? と私は思うのである。

アサド政権(先代の父親から息子現大統領まで1971年からずっと続いている)下では言論の自由はなく、住民同士による監視社会だったが、旅行者にとって世界で一番安全な国と言われ、世界中のバックパッカーが安心安全な旅をできた国だったのに。

結果論でいうと、「アラブの春」での政権転覆が曲がりなりにも成功したのは、最初に起きたチュニジアだけ。

・エジプト→ムバラク政権崩壊、選挙でムスリム同胞団が第一党になるもイスラム寄りの憲法改正を強引に進めて軍部がクーデターを起こし、現在は軍政

・リビア→カダフィ政権崩壊、その後国を東西に分けて士族による石油利権分捕り合戦が始まり内戦勃発。そのすきにISが勢力拡大中

・イエメン→サーレハ政権崩壊、その後ハディ副大統領が暫定大統領に就くも、フーシがクーデターを起こし内戦勃発。

・バーレーン→反政府勢力が政権打倒を目指して集会を企画した段階で政府による武力弾圧、アメリカ黙認(アメリカ軍が駐留しているから)、反政府派撃沈。


アサド政権が良いとは言わないが、アサド政権だけを批判しているジャーナリストはあまり信用できない。というのが私のスタンス。


で本書。

地域的に著者の専門外であるナイジェリアのボコハラムまで盛り込んだ(なーんか上っ面の解説に終始している)のは失敗だったんじゃないかなあ。と思う次第。

(とはいえ著者は在カメルーン特命全権大使も務めていたので、ナイジェリアが全くの専門外というわけではないのだが)


5点/10点満点

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2017/01/07

渡部潤一/渡部好恵「最新 惑星入門」感想。
サイエンス。2016年09月06日読了。

本書出版時である2016年7月現在までに判明している、惑星・衛星・小惑星・太陽系外縁天体に関する最新の情報を盛り込んだサイエンス本。著者渡部潤一は国立天文台教授で副台長。

太陽系外縁天体(冥王星より外側にある惑星や準惑星等)に関してはラスト15ページくらいでさらっと書かれているだけだが、天体観測技術の向上に伴って、惑星級の大きさを持つ天体が新たに発見される可能性が高まってきているとのこと。

ワクワクしますね。

星好きにはお勧めできる本です。ただあとがきによると、著者が過去に書いた本を再構成している部分がかなりあるとのことなので、著者の本をすでに読んだことのある人にとっては肩透かし的な結果になるやもしれません。


8点/10点満点

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2017/01/06

ケイト・エイディ/加藤洋子訳「ふだん着で戦場へ」感想。
自伝。2016年09月01日読了。

1945年イギリス北部に生まれた著者は、1968年にBBCに入社。世界中の紛争地からニュースを送り届けるジャーナリスト兼リポーターとして活躍。本書はジャーナリストとして活躍した自分を振り返る自伝。原著は2002年に出版され、日本語版は2006年に出版された。

私は日本語版出版直後に買い、読み進めたのだが、イギリス人特有のやたらと比喩を使って何が言いたいのか分からないまわりくどい言い回し、ねちねちした嫌味ったらしい言い回しに辟易し、100ページくらいで読むのを中断した。(注:イギリス人作家(例:R.D.ウィングフィールド)の小説とアメリカ人作家(例:ドン・ウィンズロウ)の小説を読み比べると、この辺りの違いはくっきりと出る)

そして2016年、おおよそ10年ぶりに読むのを再開した。

10年前と比べると私の世界情勢に関する知識が増えたため、以前より読むのが苦痛ではなかった。少なくとも、著者がどういう戦場に行き、どの現場を取材しているのかが理解できた。

男尊女卑がまだ残っている時代に、戦場の最前線に行き取材をする著者の行動力はすごい。すごいのだが、欧米の価値観ですべてを押し切ろうとするところは共感できず(1970年代のイスラム圏で、女性も社会進出!するのが欧米では当たり前なのだからジャーナリストにもなるのだ。ジャーナリストは尊重せよ。的なことが書かれている)。

自伝というのは自分にとって都合のいいことしか書かないんだよなあ、相手にどう思われているかは書かない(気づいていないから書けない)んだよなあ、と思うのであった。

戦場ジャーナリストの自伝としては可もなく不可もなく、ごく普通の本。

ただし、著者の取材先に関する説明があまり無いので、1970年代~90年代にどこの国が戦争状態にあったのかなど、世界情勢に関する知識が無いとちっとも面白くないかもしれない。10年前の私はちっとも面白くなかった。


5点/10点満点


イギリス人作家とアメリカ人作家の違いの私なりの例

「A氏が殺された」を表現する際

◆アメリカ人作家
「A氏が殺された」

◆イギリス人作家
「A氏が謎の人物の毒牙にかかり、虹の橋を渡った」

的な比喩を用いる傾向にある。

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2017/01/05

石川直樹「最後の冒険家」感想。
伝記。2016年08月23日読了。

熱気球で太平洋を単独横断する冒険にチャレンジし、そのまま行方不明となってしまった公務員冒険家神田道夫氏の足跡を追ったノンフィクション。

執筆者の石川直樹氏は、第1回目の熱気球太平洋横断にパートナーとして同乗し、太平洋上で墜落、運よく日本郵船のコンテナ船に救助された経歴を持つ。

本書は、熱気球に取りつかれた冒険家神田道夫氏の情熱を過不足なく伝えている。

一気に読み終えた。かなり完成度の高いノンフィクションである。


8点/10点満点

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2017/01/04

塩見鮮一郎「貧民の帝都」感想。
いわゆる新書。2016年08月19日読了。

江戸時代末期から明治、大正にかけて、東京には巨大なスラム街がいくつもあった。

江戸幕府が大政奉還を行って(1868年3月12日)、徳川家に忠誠を尽くす侍彰義隊が上野寛永寺に立てこもり壊滅する5月15日頃まで、江戸は無政府状態だった。

その頃江戸を離れたのは支配層と富裕層で、残っていた者は日々どうやって暮らしていけばいいのかすら分からぬ者が多かった。新政府は古格にとらわれない統治を開始するが、置いてきぼりをくった貧困層から惨状の訴えが殺到した。

そこから新政府は貧困対策を開始するが、対策に不満を持つ者が独自の生活をはじめ、スラムと化していった。

というようなことを豊富な史料(数字)を基に綴られている。貧困かつ傷病者を救うために専門の療養施設を作ったり、その運営に奮闘する人の話が出てきたり、この時代の東京(江戸)の一面を知るには非常に優れた本である。

資料的な価値は高いと思うのだが、読む前に私が勝手に抱いていたイメージと異なっており、私的にはちょっと退屈な本だった。なんかすみません。


5点/10点満点

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2017/01/03

青木盛久「ペルーからの便り」感想。
回顧録。2016年08月13日読了。

本書は、1996年に発生した在ペルー日本大使公邸占拠事件の時に、在ペルー特命全権大使として赴任していた青木氏の回顧録である。

内容としては、前半150ページが着任してから友人に宛てた「ペルー便り」という日常を書いたエッセイ、後半50ページが在ペルー日本大使公邸占拠事件の生々しい体験記(127日間の人質生活)である。

本書は、人質として捕らえられていた127日間の後半部分に焦点を置きやすいが、前半部の方が面白い。

p19
「1985~1990年のガルシア政権のポピュリスト的なバラマキ福祉政策は、この国に極左のテロの猖獗(しょうけつ=悪い事がはびこること)と、ハイパーインフレーションをもたらし、ペルーを崩壊の縁に追い込んだ。」

アフリカや中近東の近現代史はそこそこ本を読んだけど、南米の近現代史はまだまだ勉強不足で、こんなことがあったとは知らなんだ。こういう事実がありながら、ベネズエラは左翼ポピュリストのチャベス、無能のマドゥロが政権を握り、2017年の今、国を壊滅に追い込んでいる。歴史を学ぶのは大切だ。

p42
「農業における最大の問題点は、等高線栽培(段々畑)を行わないことによる土壌の流出である。」

段々畑にはそういう効果があったのか。それは全く知らなかった。


1997年に出版された本書はもう古本でしか手に入らないけど、経済的に行き詰っていたころのペルー(今はAPEC・TPPに加盟するくらい経済はそこそこ順調。貧困層対策はともかくとして)を知ることができる良書である。


7点/10点満点

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2017/01/02

セキュリティ集団スプラウト「闇(ダーク)ウェブ」感想。
いわゆる新書。2016年08月09日読了。

インターネットはオープンである。

と思われているが、本書によるとインターネットは3つの世界に分類される。
(1) 世界中のだれもがアクセスできる自由な空間(企業Webサイトなど)
(2) 限られた一部の人だけが触れることのできる空間(Amazonやfacebookなど、IDが無ければ利用できないサイトはここに含まれる)
(3) サイバー犯罪者が跋扈(ばっこ)する闇の空間

(1)はサーフェスウェブと呼ばれ、インターネット全トラフィックの1%未満しかない
(2)はディープウェブと呼ばれ、
(3)はダークウェブと呼ぶ。

ダークウェブには、理論上はほぼ発信者を特定することができないTorを使ったものが多く、それら手口の紹介と、捜査機関との攻防などが本書の主な中身である。

ただ、ダークウェブで使われる犯罪の手口を詳しく書くわけにはいかないので、上っ面の解説で終わってしまっている。これはしょうがないとはいえ、物足りなさを感じるのもやむを得ない。

p68
「LINEや出会い系のチャットアプリが広がってきたことで、今の若い子たちはほとんどメールを使いません。おかげでスパムメール業者はどんどん衰退しています」

思わず笑ってしまった。


5点/10点満点

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2017/01/01

わたくしの読書量 月別の推移


天野才蔵 読書量月別推移 2016年12月末まで
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
2016445842376476
2015863258959544
20146851055674863
2013751084898610115
2012137987756128610
20118625239825811
201031423 010135855
200996969911411321
200812710109111013981010
20078151316141515125 101111
2006988677128814711
20059686101951351079
2004433138125116677
20036568267531436
20026866576661166
20014553367105566
2000545564645643
1999562768563367
19981165645846485
199784697811839411
199610961148739455
19952647549468711
19948811556846447



黄緑は月間10冊以上、水色は最高、赤は月間1冊、黒は月間0。
記録を取り始めて22年、月間読書0冊は世界一周を終えた(2010年5月26日帰国)直後の2010年6月の一回のみ。
例年、7月、8月、10月、12月の読書量が多い傾向にある。


◆イチオシマンガ↓

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わたくしの読書累計一覧表 1994年~2016年末まで。

1994-1997の間は、非小説をあまり読んでいなかったのでジャンル分けしていない。

合計1885冊/23年 (年平均82.0冊)

天野才蔵 2016年末マデの読書総括
西暦SF系冒険系歴史系純文学小説計ルポ新書旅モノ実用書非小説計合計
20160000032116116060
2015011024214286668
20140610737121526673
20131120417441798791
2012072253432710156498
20114200634612116369
20101400520131385459
200948431916132486180
2008611225441918231575119
2007128663221304121113145
200611156840231292165105
200511149438112411569107
20041314320595017262685
20032026365541381671
200217222012710026879
20011519166561008965
200014181144710091057
1999201111345504101964
199818203243802192972
1997163421273 151588
199623367066 151581
19959500362 111173
199419450569 7776

◆イチオシマンガ↓

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